今、GoogleやMicrosoftといった外資系IT企業は、業績も好調で、待遇も良いため就職先としての人気が高まっています。
私自身、外資系で10年以上の経験があり、今はGAFAのうちの一社で仕事をしていることから、最近、友人や知人から転職の相談を受ける機会も増えています。
この記事では、私の10年以上の業界経験を元に、「外資系IT企業に転職する方法」と題した、転職に向けたアプローチの一つを解説していきます。
別の業界から外資系IT企業に転職ってできるの?
こういった疑問を持っている方のために、外資ITへの転職に必要な具体的なアクションについてお伝えします。
ここでは、履歴書の書き方や面接のコツといった目先の戦術的な話ではなく、「目標設定とその達成に向けたアクション」という戦略的な話をしていきます。
具体的な内容としてはこちらの通りです。
転職のために必要なスキルと経験
まず、「外資系IT企業に求められる人材とはどんなものか?」理解しておきましょう。
企業から中途で採用されるためには、大きく分けて業界経験と職種経験が必要です。
業界経験とはIT、広告といったビジネスの種類。
職種経験とは、営業や経理といった、仕事の種類のことを言います。
この二つの経験が募集条件とマッチしていれば、基本的には採用される可能性がある、と考えることが出来ます。
実際に、公開されている求人情報を見てみましょう。
こちらはGoogleのクラウドセールスの求人情報です。
必要な条件/経験
Google Cloud 採用ページより
・学士号を取得していること(同等の実務経験でも可)
・セールスやアカウント管理に携わった10年以上の経験
・SaaSまたはクラウドの販売に携わった3年以上の経験
・日本語および英語でのビジネスレベルのコミュニケーション能力
「セールス」という職種の経験と、SaaSまたはクラウドという「IT業界」に関する経験が必要ということがわかります。
このように、企業が求める人材は業界経験と職種経験の両方を持った人材である、いうことが見て取れます。
この話を聞くと、やはり「未経験からの転職は不可能では?」と思われるかもしれませんが、そうではなく、やり方によっては十分にチャンスを作ることが出来ます。
では、どうすればいいのか?アプローチの方法は大きく二つあります。
1.「未経験でも採用してくれるポジションを探す」
2.「募集条件にマッチしたスキルや経験を積むアクションを取る」
この二つの方法について、以下で解説していきます。
未経験でも採用してくれるポジションを探す
まず一つ目の方法についてです。
この方法は、「まずは外資系IT業界に入る」ということを目標にした場合には、特に有効なアプローチです。
言ってしまえば、企業を選ばずに、とにかく採用してくれそうなところを探す、ということです。
未経験あるいは経験が浅くても採用しているポジションというのはそれなりにあって、特に急成長していて人が足りていない企業や、逆に成熟・衰退傾向にある企業などで、ハードルを下げて採用を行なっている企業が狙い目です。
具体的に現時点での各社の採用ページを眺めてみましょう。
こちらはセールスフォースのインサイドセールスのポジションです。
Basic Requirements:(必要な経験)
Salesforce 採用ページより
・法人営業経験4年以上 or IT法人営業2年以上(必須)
・新規開拓営業経験をお持ちの方(必須)
IT業界業界の経験が無くとも、営業経験があれば問題ないというケースです。
セールスフォースでは外勤の大手担当の営業は基本的に業界経験を求められますが、内勤はジュニアのセールスを採用して育成する方針なので、このような求人があったりします。
またこちらは、オラクルのクラウドセールスの求人です。
職歴・スキルなどの必須条件
・学歴不問/第二新卒歓迎
・社会人経験1年以上
・チャレンジ意欲をお持ちの方
Oracle採用ページより
社会人経験1年以上で、業界や職種の条件さえも不問という記載になっています。
実際にこれらの会社では異業種出身の方も活躍しているようです。このようなポジションを狙って、まずは勉強のつもりで業界経験を積んでいくというのは一つの考え方です。
この話を聞いて、いやいや私は「どんな会社でもいいわけじゃ無い」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、そもそも未経験からの転職はハードルが高いので、自由に企業を選ぶことは難しいということと、より重要なポイントとして、一度外資系IT業界に入ってしまえば、そこからの転職は非常に簡単になる、ということがあります。
現実として、外資系IT企業は「同業他社の出身者が大好き」なんです。
外資系IT企業の経験者、というだけで別の外資系IT企業にも格段に入りやすくなりますし、ヘッドハンターからの誘いも急激に増えます。
実際に、外資系IT業界では、人材が行ったり来たりしており、まるで同じ会社で部署異動してるかのように、定期的に転職を繰り返している人も少なくありません。裏を返せば、一度、外資系IT企業に入ることが出来れば、同業他社への転職はとても簡単になる!ということです。
ですので、最初の第一歩としては、会社にこだわらず「まずは業界に潜り込む」という発想をしてみるのも良いんです。
もし、いきなり志望企業へ入ることは難しくても、一度業界の中に入ってしまえば、そこからの転職は、グッとハードルが下がります。まずは、外資系IT業界の中に入る、ということを目標にしてみるのは賢いやり方です。
募集条件にマッチしたスキルや経験を積む
次に二つ目のアプローチについてです。
これは、すでに、具体的に狙っている志望先がある。と言う方には特に有効な方法です。
目標とすべきポジションを決めて、必要なスキルや経験を積んでから、応募をする。というパターンです。
この場合は、「目標とすべきポジションをどこにするか?」を決めることが必要になってきます。
ゴール設定に関しては、「Googleに入りたい」とか「Microsoftに入りたい」といった会社単位で目標を決めるのではなく、ポジション単位で目標を設定し、そこから逆算して経験を積む必要があります。なぜなら、ポジションによって求められる人材は違うからです。何を目指すかによって必要なアクションは変わります
このポジションという考え方を理解するために、「外資系の採用の特徴」は押さえておきましょう。
外資系企業は「職種別採用」を行っており、部署単位で、欲しい人材を採用しています。採用の権限は各部署にあり、ポジションによって求められるスキルや経験が違います。
そして、今、どの部署で、どんなポジションを募集しているのかは、採用ページなどで全て公開されています。そこには、必要となるスキルや経験も明確に書いてありますので、これらの募集条件を見て、採用されるために必要なことを把握することが出来ます。
ここでもう一度、Googleの採用ページを見てみましょう。
■広告セールスのポジション
必要な条件/経験
・学士号を取得していること(同等の実務経験でも可)
Google採用ページより
・広告セールス、マーケティング、コンサルティング、コマース、メディアのいずれかの分野における6年以上の実務経験、または広告代理店との6年以上の協業経験
・英語および日本語による、文書及び口頭での優れたコミュニケーション能力
■クラウドセールスのポジション
必要な条件/経験
・学士号を取得していること(同等の実務経験でも可)
Google Cloud 採用ページより
・セールスやアカウント管理に携わった10年以上の経験
・SaaSまたはクラウドの販売に携わった3年以上の経験
・日本語および英語でのビジネスレベルのコミュニケーション能力
このように、同じ営業というポジションであっても広告系の場合と、クラウドの場合とで求められる知識も経験の年数も違うことがわかります。一言でGoogleといっても採用されるために必要なスキルは異なるのです
このように採用ページを見て、行きたいポジションが見えてきたら、その経験を積むためのアクションを取ります。
具体的なアクションの一つとして、「部署異動」があります。広告系のポジションなら宣伝部に異動する、IT系のポジションならIT部門に異動する、といったことにトライして、関連業務の経験を積む、という手段があります。
もし、部署異動が難しい場合には、やはり「転職」ということが手段になります。「転職のための転職」といった形になるので、少し遠回りとはなりますが、まずは日系IT企業や広告関係の企業に転職して「業界経験を積む」という方法は現実的なアプローチです。
大手は難しかったとしても、スタートアップや中堅、中小企業、または大手の関連会社であれば、未経験からでも入社できる可能性が高くなります。
その場合にオススメなのは、志望する外資系IT企業のビジネスパートナーや、関連製品、サービスを取り扱っている企業を狙うことです。
例えば、Googleを目指すならGoogleの広告を使ってビジネスをしている広告代理店、あるいはMicrosoftを目指すなら同社の製品を販売、サポートをしているIT企業といったように、関連する業務の経験を積むことで、企業から歓迎される可能性が高くなります。実際に、外資系IT企業では、こういったビジネスパートナーから転職してくる人も多くいます。
具体的に「どんな会社に行くべきか?」という判断は、現在のあなたの経験やキャリアによっても変わってきます。
転職エージェントに相談しながら、行くべき会社を考えていくのがオススメです。
学歴・資格・英語の必要性について
最後に、転職のチャレンジするにあたり、よく聞かれる疑問についてもここでお答えしていきます。
それは、学歴、資格、英語力が必要なのか?ということについてです。
結論から言うと、学歴、資格、英語力より圧倒的に重要なのは実務経験と実績です。
この三つが揃っていても実務経験が無ければ基本的に採用はされません。逆に、この三つがなくても実務経験があれば採用されます。
ですので、外資系IT企業に転職するために、「学歴や、資格や、英語力を得るために勉強する」といった行動は基本的には効率の悪いやり方であることは強調しておきたいと思います。
まず学歴についてですが、中途採用の場合は、学歴はほとんど重視されません。
海外の一流大学のMBAであれば、多少有利にはなりますが、外資コンサルほど採用へのインパクトは少ないため、もし転職のためだけに取ると言うのは、お金と時間がかかりすぎる手段だと思います。
次に資格ですが、技術系の職種であれば、製品の認定資格については歓迎されますが、資格だけあって実務経験がない状態ではほとんど価値がありません。興味があるなら勉強するのはいいことですが、資格をアテにするのは得策ではありません。
最後に英語力です。英語はできた方がいいですが、それだけで採用されることはありません。
ポジションにもよりますが、営業系の職種であれば、英語力は不問という会社も多いです。英語が心配なら、さっさと外資系に転職してしまって実践で使い始めてみた方がよほど早いです。
いずれにしても、これら学歴、資格、英語の勉強よりは圧倒的に実務経験。机に向かって遠回りをする前に、採用ページを見て、必要なスキルや経験を積むための行動をしていきましょう!
このような景気情勢の中でも、外資系IT企業は好調な会社が多く、採用を増やしています。ぜひ未経験からでもチャレンジして頂き、一緒に業界を盛り上げていきましょう!